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福島章先生の説 [雑感]

 上智大学の福島章先生は、とくに異常な殺人事件を起こす人々について、「殺人を犯す人々には殺人者に特有の精神疾患が認められるのではないか」と考え、殺人者精神病という疾病単位(=病名)の仮説を立てておられます。
 その考え方は以下のとおりです。

1. 多くの重大殺人者の人格構造は境界例人格構造以下のレベルにある。

 境界という言葉は現在はあまり使わなくなりましたが、もともとは精神病と神経症の中間的な重症度を持つという意味の、精神分析学から来た用語です。現在の病名でいえば境界性パーソナリティー障害(DSM分類)もしくは情緒不安定性パーソナリティー障害境界型(ICD分類)の一部があてはまります。気分の上がり下がりが激しくその周期がきわめて短い、自傷やアルコール・薬物の乱用・性的逸脱など自分の心身を害する行動が見られる、自殺の脅しなどで強力に他人をコントロールしようとする、常に強いむなしさがあるなどの症状が特徴です。
 境界例では対人関係のとらえ方が乳幼児レベルにあるとされますので(部分対象関係といいます。情緒的に他人と自分の区別が付かない状態で、自分がこう思っているのだから相手も当然同じに思っている、と感じます)、重大殺人者においてはそれ以下ということになります。

2. 殺人者の生活史には2亜型がある。

 徐々におかしな行動が増えてくる「エスカレート型」と突然犯罪に走る「いきなり型」があります。動物を虐待する時期があり、つぎに知人に毒を飲ませるようになるなどはエスカレート型と言えるでしょう。

3. 殺人者の多くは、脳の微細な異常所見を伴う。

 福島先生はくも膜嚢胞、前頭葉糖代謝低下、脳波における6Hz陽性棘波などの例を挙げておられます。

4. 殺人者の多くは自殺願望を抱く。

 報道でもしばしば見られるとおりです。このため死刑制度の存在が犯罪促進的に働くことがあります。

5. 殺人者の多くは、幼児期から外傷的な体験に曝されている。

 親からの虐待を受けるなどです。アドルフ・ヒトラーが子ども時代に父親から暴力を受けていたことはよく知られています。暴力のみではなく、両親が不仲であるなど精神的な虐待も問題となります。

 重大殺人事件について、しばしば精神鑑定の結果が一致しないのは、従来からある病名に無理やり当てはめようとするためなので、それを避けるためにこのような概念があった方が良いのではないか、というのが福島先生の説です。診断が一致しないことで人々が精神医学への信頼を損なってしまう恐れもあります。じっさいに、渡辺淳一が「精神鑑定は当てにならない」という発言をしています。
 最近の名古屋大生の事件について、マスメディアで的外れなことを言っている人が多いのが気になったので、上のことを記しました。多くの人が異常な行動を正常な心理で説明しようとしますが、それには無理があることを知っていただければと思います。

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