So-net無料ブログ作成

一流会社でありながら [仕事]

精神科の医者をやっていると会社内のストレスで調子が悪くなる人をたくさん診ることになる。ある程度の規模の会社ならば1人ぐらいおかしなやつがいて、被害を受ける社員も出てくる。しかしここで書くのは会社ぐるみで障害者を追い出そうとしている酷いケースである。

Aさんは20代前半である。大学を出てある会社に就職した。彼女には身体に障害があったが知的には全く問題なく、性格もよく優秀で、バリバリ仕事をこなしてきた。もちろん会社は彼女の障害を承知の上で採用したのである。

ところがある年の春、上司が異動して別の人になった;これがとんでもない奴で、彼女にとても処理できないような膨大な量の仕事を押し付け、自分は暇そうに遊んでいた。彼女の仕事が間に合わないと気分のままに怒鳴り散らし、彼女は次第にうつっぽくなっていった。

で、私の診療所に来たわけだが、もちろんうつ病ではなく、診断は適応障害。車で会社に近づくだけで吐き気がするとのことで、とりあえずは2か月仕事を休むことになった。

2か月後彼女は完全に回復したため復職可能の診断書を持たせて帰した。しかし会社側の反応は意外なものであった。

「産業医が診察した結果をふまえ、あと2週間自宅で毎日作文をして、そこにどうすればよりよく仕事ができるのかを書くこと。それを見た上で実際に復職可能かどうか判断する」
と言われたというのである。

彼女は毎日文章を書きづづけ、会社に持っていった。そこで言われたのは、

「具体的に書いていない。さらに2週間書き続けるように」

という返事だった。

今後の展開を読者諸君はもうおわかりだろう。その後も彼女は作文を持っていくたびにダメ出しをされたのである。そしてそれが延々と半年間繰り返された。彼女はそれが元でうつ状態が再燃してしまった。

私は呆れ果てて怒る気にもならなかった。全国的に有名な大会社である。こちらは診断書に就労可能であると書いているのに、まったくもって無視なのである。そして、実際にこういう目にあった患者さんは世間にたくさんいるのである。

ある会社が社員に対してひどい取扱をするのかどうかはその規模や知名度に全く関係がない。この会社は現在でもテレビでCMを打っているが、社員に対してはこのザマなのである。現在は若い人が就職してもすぐ退職してしまうことが多いと言われるが、その原因の一旦は会社側にあるのだといえる。

現在の日本企業は実績主義になり、家族的な雰囲気を重んじる風土がなくなって実に味気なくなっている。米国のやり方を取り入れたのだろうが、逆に米国では旧来の日本式が良いと考える人が多い。世の中には効率よりも大事なものがあるのである。

付記:
私は今までブログを敬体の文章で書いてきましたが、今後はそれにこだわらないことにします。

さらに付記:
「ロミジュリについて書かないの?」という声があるかもしれませんが、後日書きます。申し訳ありません。


コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

こんな薬剤師は困る [仕事]

以前聞いた話です。

私のところに通院していたある患者さんに対して、眠前薬としてエチゾラムを出していました。あるとき花粉症になったので内科に行きレボセチリジンを処方してもらいました。処方箋を持って薬局に行ったところ、薬剤師から

「レボセチリジンは眠くなるから、それを飲むときはエチゾラムは飲まなくていい」

と言われたそうです。

これを聞かされたとき、私は一瞬なにが起こったのかわかりませんでした。薬剤師が薬を止めろ、と勝手に指示したわけです。こんなことが許されるのでしょうか。

まず医学的に言えば、レボセチリジンで眠くなるのとエチゾラムで眠くなるのとではそのメカニズムが違います。つまり眠くなることの意味が違うのです。さらに、勝手にエチゾラムを抜くと、離脱症状が出る恐れがあります。

法律的な面から言うと、処方権は医師にありますから薬剤師が勝手に薬の変更はできないのです。この場合はまず薬剤師が私のところに連絡をして変更の許可を得るべきでした。これはどちらが偉いかという話ではなく、法に基づく仕事の順序なのです。

医師法には次のようにあります。

第一七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。

医師は医業の独占業務資格なのです。処方は当然、医業の内容の一つです。

こういうことが起こるのは薬剤師が自分が偉くなったと勘違いしているためなのです。その原因は医薬分業政策にあります。

医薬分業になったのは薬剤師たちのロビー活動のおかげです。要するに「医者だけが儲けるのはずるい。俺たちにも分前よこせ」というわけです。その主張が功を奏したのは大手薬局チェーンや製薬会社が厚労省の天下りを受け入れることができるからです。

日本医師会は自民党への献金額は多いですが、医師会は零細開業医の集まりですから役人の天下りを受け入れることができません。ここが医師側がぱっとしない原因です。いくらお金をつぎ込んでも、総選挙で票を入れても、運営側である厚労省が言うことを聞いてくれないのです。

それで、このようなおかしなことが起こるのです。

医薬分業になったぶん、医療費全体が増えました。薬剤師の取り分が増えたからです。「かかりつけ薬局」なんていうおかしな言葉も登場しました。薬は医療機関が出せば良いのです。しかし、それができにくい健康保険制度に変わってしまったのです。

薬剤師がベンツに乗り、医者がプリウスに乗っている時代です。これから医者は落ちぶれる一方でしょう。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

依存症に対する一般の認識はまだまだ低い [仕事]

2018年2月18日の「ワイドナショー」を見ましたが、ネットゲーム依存をWHOが疾患として記述するという報道に対して、ある出演者は以下のような趣旨の発言をしていました。
  • そんなことの何が問題なのか。
  • 何でもかんでも病気にしてしまうのはいかがなものか。
  • 世の中がつまらないのでこういうものに走るのだから、世の中を面白くすれば良い。

これらはまったく素人の考え方で、誤っています。

依存症は疾患であると考えざるを得ません。オリンピックのメダリストのように大変な努力をして実績を上げてきた人でも簡単に依存症になってしまうため、意志の強さの問題ではないことは明らかです。依存症に関しては生物学的にも脳内報酬系の問題が指摘されています。依存症が進行すると自分や周囲にとって問題が起こってもその行動が止められません。たとえば一家の働き手が依存症となり仕事ができなくなる・仕事をしても依存対象に大きな出費をしてしまうなどです(ギャンブルなど)。

なんでもかんでも病気に、という指摘に対しては、そういうふうにならないようにICD 11で診断基準を厳密に定めようとしているわけです。ICDとは何かぐらい勉強してから発言してほしいものです。

仮に依存症が世の中のせいで起こるとしたら、世の中を変えていかなければなりません。しかし、依存症で苦しんでいる患者さんは現在ただ今この世の中に存在するのです。世の中を変えるとして、どのくらいの時間と費用がかかるのでしょうか。もしそうすべきなら、この出演者はどう世の中を変えればよいかを具体的に指摘するべきでした。

なおこの番組で中国のネット依存の治療施設が紹介されていました。軍隊式教育が行われていること、過去に電気ショックが使われていたことが伝えられていましたが、こういうのを現代の治療と誤解されると困るのです。久里浜病院で治療が開放病棟(鍵の掛からない病棟)で行われるようになったのは1960年代の話で、中国は日本よりも50年以上遅れていると言わなければなりません。また、多くの治療は外来で行われています。

この番組の冒頭で、「素人は専門家に口を出すなということはおかしい」ということを言っていた人がいましたが、まさにこういうおかしな主張を述べる人がいるので、専門外の人は言葉を慎むべきなのです。私は同様の主張をこれまで書いています。

http://takekakkon-k.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-1

http://takekakkon-k.blog.so-net.ne.jp/2015-05-12


コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

ストレス関連障害とその対策 [仕事]

開業で精神科の臨床を行っていていま一番多い病気はもちろんストレス関連障害です。病名で言えば適応障害が最も多く、そのつぎがPTSDもしくはそれに近いレベルのものです。精神科病院に勤めていたときのような統合失調症の患者さんはごくわずか。うつ病は多いと言えば多いのですが、その数はストレス関連障害の足元にも及びません。

最も多いパターンは職場でひどい扱いを受けておかしくなるというもの。上司や同僚からプレッシャーを掛けられる・侮辱される・辞めさせないと言われるなどです。

現代では企業が一生その人の面倒を見るというのが減って、聞こえはいいが名ばかりの実力主義、そして人を減らして働かせるだけ働かしておかしくなったら使い捨て、というやり方が蔓延しています。これは企業の規模にまったく無関係で、テレビでCMを打っているような企業でも大勢の患者さんが来たりします。

患者さんを見ていて問題だと思うのは、相当ひどい扱いを会社から受けていても「辞められない」という訴えです。しかし特殊な場合を除いて労働者はすぐに退職することができます。退職届を出せば2週間後には退職となります。退職届は◯か月以上前に提出すること、などの規定が就業規則にあったとしても関係ないのです。

患者さんが「辞められない」と思うのは会社から洗脳があるためです。「お前は辞められない」「損害賠償を請求するぞ」「代わりの者を見つけてこい」etc.etc... これらは全てうその脅しなのです。

人は日本国憲法で職業選択の自由が認められていますのでいつでも辞められます。損害賠償請求訴訟を起こすには手付金だけで大きな金額がかかりますのでそんなに簡単に訴訟はできません。また代わりの者を見つけるのは経営者の仕事です。

このような患者さんが来た場合、会社側が非協力的であると見えれば私はためらいなく「辞めなさい」と言います。患者さんがどうしても抵抗する場合は「診断書を出すからしばらく休んでよく考えなさい」と言います。

社員に対してひどい取扱をする会社においては社員にどんどん辞めてもらって、社会全体が立ち行かなくなるぐらいにいったんなってもらったほうがいいのです。そうすれば企業側も考え直すでしょう。

「外国人を雇えばいい」と考えている企業もありますが、そんな小手先のやり方がいつまでも続くわけがありません。今や地方では外国人が想像を絶するスピードで増え続けていて彼らに対する反発が日増しに高まっています。そう遠くないうちに大きな動きが出るでしょう。

上に述べてきたような状態が続くのであれば、日本ではどんどん生産性が減っていくのではないかと心配しています。企業が正社員として人を雇って丁寧に面倒を見続けていくというスタイルが労働者に安心をもたらすのです。そしてそれにはコストがかかることも経営者は理解しなければなりません。

なかには社員に対して面倒見の良い企業も多数あります。しかしそういうことは入社してみるまでわからないので怖いところです。私にご連絡をいただければ近くの企業についてはお教えできます。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー